​明治工芸の輝き

 250年もの間続いた江戸時代の泰平の世が終末を迎え、日本が近代国家の道を歩み始めて150年が経ちます。当時の日本は産業がほとんど無い典型的な農業立国でしたが、時代の流れとはいえ産業革命をすでに体験している欧米列強の力によってこじあけられるようにして国を開いた当時の国内の混乱がどれ程のものであったかは、想像をはるかに超えたものがありました。

  政治の世界で、また経済の分野で、混乱の激烈さは眼も眩むほどの速度で続いていましたが、しかし一方では階級社会に馴らされた多くの人々の毎日の暮らし向きは存外に緩慢な変化であったろうと思われます。

 それが1871年(明治4)の「廃藩置県」によって社会環境は一変します。それまでの「守り」「守られる」相関関係が崩壊するという驚天動地の混乱の中に、人々は放り出されたといって過言ではないでしょう。近代日本の産みの苦しみです。

 ここに取り上げたのは、この社会的な帰属意識の崩壊からいち早く立ち直り、地に足をつけて歩き出した明治の職人らの生きた記録です。